FE 12-24mm F2.8 GM で秋の星空を撮る


-2020年10月揖斐谷-






α7M3+FE 12-24mm F2.8 GM
赤道儀ビクセンAP(カウンターウエイト1㎏×2)








揖斐谷ではこのところ晴天が続いている。ようやくの秋晴れと言いたいところだが、昼間の気温は30度近くもあり、湿度も高く、夜になっても風が強いなど、シーイングは良くない。
この晩もあっという間に雲が広がってきた。
薄明が終わったあとのわずかな時間。1枚画像で撮るのが精一杯だったが、1枚だからこそ見えてくるものもある。

夏の星座が天頂から西へ傾き始め、代わって東の空には秋の星座の登場。
カシオペヤ座に続いてペルセウス座の二重星団、右上にはペガススの大四辺形。
四辺形を構成する恒星の1つアルフェラッツは、かつてはペガスス座とアンドロメダ座に二重所属していた。所謂アルフェラッツの境界である。2016年に国際天文学連合によってアルフェラッツは正式にアンドロメダ座のα星とされた。
4つの星それぞれの色の違いが美しい。
天の川に挟まれたアンドロメダ座大銀河M31も見える。
シーイングはよくないと言っても、肉眼でM31が識別できることに感謝。

使用したレンズはSONYの超広角ズームレンズ、FE 12-24mm F2.8 GM。
その描写には思わず声を上げるほど見事だ。
サジタル方向も、タンジェンシャル方向のコマ収差も、全くと言っていいほど認められない(下図参照)。
かつて星野撮影において、12mmという超広角、しかもズームレンズで、これほどまでの描写を見せてくれたレンズがあっただうか、などと思ってしまう。
レンズの値段は確かに高い。私のような者にはまさに「清水の舞台」。
しかし星野撮影にこだわりをもって撮り続けたいという者にとっては、シャッターを切った瞬間からこのレンズの虜になることは間違いない。

重量はある。この重さにもかかわらず手持ち撮影にはバランスは悪くないし、むしろ軽く感じるくらいだ。しかし恒星追尾撮影となると、使用する機材のモーメント加重を考えると、極軸のみを持つポータブル赤道儀には少しばかり荷が重い。
だが赤緯軸のバランスをとったドイツ式赤道儀にセットすると、印象は一変する。
いつまでも購入価格を思い出して、内心忸怩たる思いにかられていた先ほどまでの自分は何だったのか、と思うほど撮影画像に見とれる。我ながら呆れたものだ。

今回はリアフィルターにLeeのソフトフォーカス№1フィルターを使用した。
ソフトフォーカス効果と合わせて恒星の色彩強調効果が見事。
この組み合わせに、今はとても満足している。



2020年10月13日20時21分撮影
α7M3+FE 12-24mm F2.8 GM、12mm、ISO1600、f2.8開放、60秒露光の1枚画像、LEE SP-31 ソフト №1使用、長秒時ノイズリダクションなし、Raw、赤道儀で恒星追尾撮影


中央(100%)




中央左(100%)



右下(100%)



右上(100%)




 【星空撮影で留意したいこと】

本レンズは所謂「出目金レンズ」で、レンズキャップはかぶせ式。
以前 Ai AF Fisheye-Nikkor 16mm f/2.8D を使用していた時、かぶせ式のキャップを紛失して困ったことがあった。
百均で適当な材料を見つけてきて、部品到着までを凌いだ。使用しているうちに緩みが出てきていたことが原因だった。
本レンズのかぶせ式キャップはよくできていて、落としてなくすことはなさそうだ。

しかしここに、一つ問題がある。
星空撮影、とりわけ天体撮影の場合は撮影後にレンズキャップをはめてダークフレームを複数枚取得する。後処理としてこれらを加算平均して減算を行うことが一般的だ。1枚ごとに長秒時ノイズリダクションをかけてカメラ内減算を行うと、一晩で撮影できる枚数は大幅に減ってしまう。流星群撮影などカメラ内減算処理の最中に火球が流れたら、それこそ目も当てられない。

さて本レンズであるが、キャップの形状からしっかりキャップをはめていても光がレンズ前面に漏れてきて、ダークフレーム取得中に光が入ってしまうのだ。参考画像を下に掲げた。4箇所から光が漏れていることがわかる。

レンズキャップの役割はレンズの前玉保護にあり、遮光ではない。通常撮影では全く問題にはならない。要は使い手の工夫が求められるということなのだろう。

これまでの撮影でも、ダークフレーム取得中はキャップをしっかりはめることに加えて、黒い覆い(帽子)をレンズにかぶせるなどして間違って余分な光が入らないように注意してきたが、本レンズはより遮光に注意する必要がある。
薄明が始まる前に撮影が終わる場合はまだよいが、朝まで撮影しているような流星群撮影ではダークフレームを取得する頃には辺りが明るくなり始めていることはよくある。ダークフレームは撮影条件と同じ外気温、カメラ内部の温度で取得することが必須なので、その夜の撮影終了直後に取得しなければ意味が無い。。
一般撮影では全く問題にならないことだが、星空撮影には工夫が必要となるということだ。

何か対策ができないか工夫したいと思うが、当面は遮光布などで覆ってダークフレームを取得するようにしたい。


                                          (篠田通弘)










FE 12-24mm F2.8 GM で秋の星空を撮る 2

20201025 追加








2020年10月15日21時30分~撮影

α7M3+FE 12-24mm F2.8 GM、12mm、ISO1600、f2.8開放、60秒露光×6枚、後処理としてダーク減算後に加算平均コンポジット処理、LEE SP-31 ソフト №1使用、長秒時ノイズリダクションなし、Raw、赤道儀で恒星追尾撮影






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